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AGA治療の未来、酵素を超えたアプローチ
AGA治療は、これまで、1型および2型5αリダクターゼという「酵素」の働きを、いかにして阻害するかに、その焦点が当てられてきました。フィナステリドとデュタ-ステリドは、まさにその思想の結晶です。しかし、医学の進歩は、留まることを知りません。AGA研究の最前線では、もはや、この酵素の阻害というアプローチだけでなく、より根本的な、あるいは、全く異なる角度からの、新しい治療法の開発が、精力的に進められています。その一つが、遺伝子レベルでのアプローチです。個人の遺伝子情報を詳細に解析し、その人が持つ5αリダクターゼの活性の高さや、男性ホルモン受容体の感受性のレベルを正確に把握。その結果に基づいて、その人に最も適した薬の種類や、投与量を決定するという、「オーダーメイドAGA治療」です。これにより、治療効果を最大化し、副作用を最小限に抑えることが可能になると期待されています。また、酵素の働きを抑えるのではなく、脱毛のシグナルを受け取る側の「男性ホルモン受容体」そのものに働きかける、新しい作用機序の薬の研究も進んでいます。たとえDHTが生成されたとしても、それを受け取るアンテナをブロックしてしまえば、脱毛の指令は伝わらない、という考え方です。さらに、薬物療法という枠組みを超えた、「再生医療」の分野も、AGA治療の未来を大きく変える可能性を秘めています。自分自身の健康な毛根の細胞を採取し、それを培養して、薄毛の部分に移植する「毛髪再生医療」です。これは、もはや薄毛の進行を食い止めるというレベルではなく、失われた毛根そのものを「再生」させるという、究極の治療法と言えるかもしれません。もちろん、これらの新しい治療法が、一般的になるまでには、まだ多くの時間と、研究の積み重ねが必要です。しかし、AGAという悩みに対する、人類の戦いは、1型・2型5αリダクターゼという酵素の発見によって、大きな転換点を迎えました。そして今、その戦いは、さらに新たなステージへと、進もうとしているのです。