個人輸入代行サイトを覗くと、国内のクリニックで処方される治療薬の半額、あるいはそれ以下の価格で販売されていることに驚くでしょう。なぜ、これほどまでに大きな価格差が生まれるのでしょうか。そのカラクリを理解することは、個人輸入のリスクを正しく認識する上で非常に重要です。価格差を生む最大の要因は、流通している医薬品が、主にインドなどで製造される「ジェネリック医薬品」である点です。先発医薬品(新薬)には開発にかかった莫大な研究費や特許料が価格に上乗せされていますが、ジェネリック医薬品はそれらのコストがかからないため、安価に製造・販売が可能です。特に、医薬品の特許制度が独自の運用をされている国では、日本ではまだ特許が切れていない薬のジェネリックが合法的に製造されている場合があります。これが個人輸入薬の安さの源泉です。加えて、国内の医療機関で薬を処方してもらう場合、薬そのものの価格に加えて、医師の診察料、検査費用、カウンセリング料、そしてクリニックの運営に関わる人件費や設備費などが含まれます。一方で、個人輸入はこれらの費用が一切かからず、単純に「モノ」としての薬の価格と、海外からの送料、代行業者の手数料だけで成り立っています。医師や専門家が介在しないことによるコストカットが、低価格を実現しているのです。しかし、ここで冷静に考えなければなりません。そのカットされたコストとは、裏を返せば「安全性」や「専門的な知見」、「万が一の際のサポート体制」そのものです。安いという事実は、薬が本物であり、品質が保証され、自分の体に合っているということを何一つ証明してはくれません。価格のカラクリを知ることは、私たちが安さと引き換えに何を失っているのかを知ることと同義なのです。