個人輸入を検討する人の中には、「自分でしっかり調べれば、偽物くらい見分けられる」と考える人もいるかもしれません。インターネット上には、偽造薬の見分け方として、パッケージの印刷のズレ、錠剤の色や形、刻印の違いといった情報が出回っています。しかし、結論から言えば、素人が本物と偽物を確実に見分けることは、限りなく不可能です。その理由は、偽造薬の製造技術が年々、驚くほど巧妙化しているからです。一昔前の粗悪な偽物であれば、パッケージや錠剤を見れば明らかに異変に気づくこともあったかもしれません。しかし、現在市場に出回っている精巧な偽造薬、通称「スーパーコピー」は、正規品と寸分違わぬパッケージやボトル、錠剤の見た目をしています。専門家でさえ、見た目だけで判断するのは困難なレベルです。本物か偽物かを確実に判定するためには、専門の分析機関で成分鑑定を行う以外に方法はありません。当然、個人がその都度、数万円もする成分鑑定を依頼するのは現実的ではありません。つまり、個人輸入で薬を手に入れるという行為は、毎回、中身が分からない薬を飲むという危険な賭けをしているのと同じなのです。あなたが「これは本物だろう」と信じて飲んでいるその錠剤は、ただのデンプンの塊かもしれませんし、未知の有害物質が混入している可能性もゼロではないのです。「いつも利用している信頼できるサイトだから大丈夫」という思い込みも危険です。悪質な業者は、最初は本物を送って信用させ、途中から偽物を混ぜ込むという手口を使うこともあります。見た目で真贋を見極めようとする試みは、もはや意味を成しません。自分の健康を、そんな不確かな自己判断に委ねることのリスクを、今一度冷静に考えるべきです。