法律のグレーゾーン?薬機法が警告する個人輸入のリスク
医薬品の個人輸入は、日本の法律である「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、通称「薬機法」によって、非常に厳格なルールの下で、例外的に認められています。この法律の本来の目的は、国内で流通する医薬品の品質や安全性を確保し、国民の健康を守ることにあります。そのため、厚生労働大臣の承認を得ていない海外の医薬品を、許可なく販売したり、他人に譲渡したりすることは固く禁じられており、違反すれば重い罰則が科せられます。では、なぜ個人での輸入は認められているのでしょうか。それは、海外で治療を受けていた人が帰国後も同じ薬を継続して使用したい場合や、海外でしか手に入らない特定の医薬品を必要とする患者がいる場合などを想定した、あくまで人道的な観点からの特例措置なのです。つまり、法律はAGA治療薬を安く手に入れるために個人輸入を推奨しているわけでは決してありません。むしろ、厚生労働省や独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、公式にウェブサイトなどで、安易な医薬品の個人輸入に対して、その危険性を繰り返し警告しています。個人輸入が「自己使用目的」かつ「自己責任」においてのみ許されているという事実は、裏を返せば、国はその品質も安全性も一切保証しない、という意思表示に他なりません。もしあなたが個人輸入で手に入れた薬を、友人や家族に「これ効くから使ってみなよ」と分け与えれば、それは明確な法律違反となります。個人輸入は、法律によって保護された安全な領域ではなく、規制の網の目からこぼれ落ちた、いわばグレーゾーンに位置する行為であることを、私たちは肝に銘じておく必要があります。