私が抜け毛の恐怖を身をもって体験したのは仕事のプレッシャーと人間関係のトラブルが重なり心身ともに疲弊しきっていた三十代の冬のことでしたが最初の異変は毎朝のブラッシングのたびにブラシが真っ黒になるほどの髪が絡まることから始まりました。最初は季節の変わり目だからだろうと軽く考えていましたが事態は急速に悪化しシャンプーをするたびに排水溝が詰まるほどの髪が抜け落ちドライヤーで乾かせば床一面に黒い絨毯を敷いたように髪が散乱しついには手ぐしを通すだけで何の抵抗もなく束になって髪が抜けるという悪夢のような状態に陥りました。鏡を見るのが怖くなり外出する際には帽子を深く被って人の視線を避けるようになり精神的にも追い詰められて鬱状態になりかけましたがこのままではいけないと勇気を振り絞って皮膚科の門を叩いたところ診断結果は「急性休止期脱毛症」というものでした。医師の説明によると極度のストレスや栄養不足が引き金となって成長期にある髪が一斉に休止期へと移行し数ヶ月のタイムラグを経て大量に抜け落ちる症状であり毛根自体は死んでいないため原因を取り除けば必ずまた生えてくると言われその言葉に救われるような思いがしました。それからの私は医師の指導のもと生活習慣を徹底的に見直し睡眠時間を確保しタンパク質とミネラルを中心とした食事を心がけストレス源から距離を置くように努めるとともに処方された育毛剤とサプリメントを真面目に使い続けました。最初の三ヶ月間は変化がなく不安で押しつぶされそうになりましたが四ヶ月目を過ぎた頃から頭皮にチクチクとした感覚とともに短い産毛が生え始めているのを発見した時の感動は今でも忘れられません。一年が経つ頃には髪のボリュームもほぼ元通りになり美容室で好きな髪型をオーダーできるまでに回復しましたがこの経験を通じて髪は心の鏡であり自分を大切にすることが髪を守ることに繋がるのだという教訓を深く心に刻むこととなりました。もし今突然の抜け毛に一人で泣いている人がいるならば決して諦めないでほしいと伝えたいですし専門家の助けを借りて原因を突き止め正しいケアを行えば髪は必ず再生するという希望を持ってほしいと願っています。