薄毛という現象は一見するとどれも同じように髪が減っていくだけに見えますがその背景にあるメカニズムは大きく分けて自己免疫疾患による破壊的な脱毛と加齢や遺伝による生理的な毛包の縮小という二つの全く異なるカテゴリーに分類されそれによって治療法も保険適用の有無も完全に分かれます。前者の代表である円形脱毛症はリンパ球が誤って自分の毛根組織を攻撃してしまう自己免疫疾患でありこれは明確な病気であるため治療の目的は免疫の暴走を食い止め炎症を鎮静化することにありステロイドや免疫抑制機能を持つ薬剤が使用され健康保険が適用されます。これに対して後者の男性型脱毛症AGAは男性ホルモンの影響でヘアサイクルが短縮し毛が太く成長する前に抜け落ちてしまう現象であり毛根自体が破壊されているわけではなく機能が低下している状態であるため治療の目的はヘアサイクルの正常化や発毛の促進となりこちらは美容やアンチエイジングの領域とみなされ保険適用外となります。この違いは治療のアプローチにも決定的な差を生み円形脱毛症では局所の炎症を抑える対症療法や免疫機能を調整する根本治療が行われるのに対しAGAではフィナステリドなどでホルモンの働きを阻害したりミノキシジルで血流を改善して無理やり発毛させたりする手法が採られます。患者側からすれば髪が生えてくればどちらでも良いと感じるかもしれませんが医学的には病気か老化かという大きな壁がありそれが費用の負担区分に直結しているのです。したがって自分がどちらのタイプの薄毛なのかを正確に知ることは治療方針を決める上で不可欠であり皮膚科医は拡大鏡を用いた詳細な観察によって毛穴の状態や毛の太さのバラつき切れ毛の有無などを確認し正確な診断を下します。もし円形脱毛症であれば早期の保険治療で完治を目指すことができますがAGAであれば長期的な自費治療を覚悟する必要があるため最初の診断がいかに重要であるかが分かります。