AGAすなわち男性型脱毛症は進行性の疾患であり放置すれば確実に髪は失われていきますが現代医学においては適切な治療を行えば進行を食い止めるだけでなくある程度の発毛を期待できるコントロール可能な症状となっておりその治療の最前線を担っているのが皮膚科であることは紛れもない事実ですが皮膚科に行けば魔法のように髪が元通りになるわけではなく医学的な限界と治療の実態を正しく理解しておくことが過度な期待による失望を防ぐためには不可欠です。皮膚科で行われるAGA治療の基本はフィナステリドやデュタステリドという内服薬を用いた薬物療法でありこれらの薬はAGAの原因物質であるジヒドロテストステロンの生成に関与する5αリダクターゼという酵素の働きを阻害することでヘアサイクルの短縮を防ぎ毛髪が太く長く成長する期間を確保するという明確な作用機序を持っています。この治療法は日本皮膚科学会が作成した男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインにおいても推奨度Aつまり行うよう強く勧めると評価されており多くの皮膚科医はこのガイドラインに沿って標準治療を提供しています。しかし治療効果が現れるまでにはヘアサイクルの周期に合わせて最低でも半年程度の継続が必要であり服用を開始して数週間で髪が生えてくるような即効性はなくむしろ初期には古い髪が抜ける初期脱毛が起こることもあるため医師の指導のもとで根気強く治療を続ける忍耐力が求められます。また皮膚科での治療はあくまで医学的に承認された薬剤を使用する保存的療法が中心であるためすでに毛根が完全に死滅して皮膚化してしまった部分に髪を生やすことは現代の薬物療法では困難でありそのような場合には植毛などの外科的処置が必要になりますが一般の皮膚科ではそこまでの対応は行っていません。それでも多くの患者が皮膚科での治療によって抜け毛の減少や毛質の改善を実感しており早期に受診して治療を開始すればするほど残存している毛包を守りフサフサな状態を維持できる可能性が高まるため皮膚科はAGAという進行性の脅威に対する最初の防衛ラインとして極めて重要な役割を果たしています。さらに皮膚科医はAGA以外の脱毛症例えば円形脱毛症や甲状腺疾患による脱毛などを鑑別診断する能力を持っており自己判断でAGAだと思い込んでいたが実は別の病気が原因だったというケースを見逃さずに適切な治療へと導いてくれる点も皮膚科を受診する大きな意義といえます。つまりAGAは皮膚科で完治するというよりは皮膚科医というパートナーと共に医学の力を借りて進行を抑制し最良の状態を維持し続ける長い旅路のようなものでありその旅を始めるための切符を手に入れる場所が皮膚科なのです。