私が深刻な抜け毛の悩みに直面し始めたのは新しいプロジェクトの責任者に任命され連日深夜までの残業が続くようになった三十代半ばの春のことであり当時の私は極度のストレスと睡眠不足に加え食事といえば会社のデスクでパソコンの画面を見ながら流し込むコンビニの弁当やカップ麺または深夜に開いている牛丼チェーン店の高カロリーな食事ばかりという絵に描いたような不健康な生活を送っていました。ある朝洗面所で髪をセットしようとしたとき鏡に映る自分の前頭部から頭頂部にかけての地肌が以前よりもはっきりと透けて見えることに気がつき恐る恐るシャンプー後の排水溝を確認してみるとそこには目を疑うほどの大量の抜け毛が絡みついておりその瞬間に背筋が凍りつくような恐怖と将来への絶望感に襲われたことを今でも鮮明に覚えています。最初はインターネットの広告で見つけた高価な育毛剤や評判の良いスカルプシャンプーを次々と購入しては試してみましたが数ヶ月が経過しても一向に改善の兆しは見えずむしろ抜け毛の量は日を追うごとに増えているようにさえ感じられ精神的にも追い詰められていきました。そんな時たまたま書店で手に取った健康雑誌の特集記事で髪の毛の成長と栄養状態の密接な関係について書かれているのを読み自分の現在の食生活が髪の毛を育てるどころかむしろ枯死させている原因そのものであることにようやく気がつきました。一念発起した私はその日から自炊を中心とした生活へとライフスタイルを根本的に切り替える決意をし栄養学の本を何冊も読み漁って髪の毛に必要とされる栄養素の知識を徹底的に頭に叩き込みました。まず髪の毛の主成分であるケラチンを合成するために必須となる良質なタンパク質を毎食欠かさず摂取することを目標に掲げ朝食にはアミノ酸スコアが百点満点である鶏卵や畑の肉と呼ばれる大豆から作られる納豆を必ず取り入れ昼食や夕食では鶏の胸肉や豚の赤身肉そしてDHAやEPAなどの良質な脂肪酸を含むサバやイワシなどの青魚を意識的にメニューの主役に据えるようにしました。さらにタンパク質の再合成を助ける亜鉛を補うために間食にはポテトチップスなどのジャンクフードを完全に排除し代わりに無塩の素焼きアーモンドやカシューナッツを食べる習慣をつけ夕食の味噌汁には乾燥わかめやあおさなどの海藻類をたっぷりと入れる工夫を凝らしました。また頭皮の血行を促進して毛根に栄養を届けるためにはビタミン類が不可欠であることを知りブロッコリーやほうれん草あるいはパプリカやカボチャといった緑黄色野菜を毎日必ず両手に一杯分は食べるように心がけさらに腸内環境を整えて栄養の吸収率を高めるためにキムチやヨーグルトなどの発酵食品も積極的に取り入れました。最初の二ヶ月間は毎朝鏡を見ても目に見えるような変化は全く感じられず本当にこの努力が報われるのかという不安に押しつぶされそうになる夜もありましたが人間の細胞が生まれ変わるのには時間がかかるのだと自分に言い聞かせて根気強く栄養バランスの整った食事を作り続けました。
食生活の改善によって抜け毛の悩みを克服した私の記録