三十代を迎えてからというもの私は毎朝のブラッシングのたびにブラシに絡まる抜け毛の多さと以前のようなふんわりとしたボリュームが失われペタンと潰れてしまう髪の毛の質感に密かな悩みを抱え続けていました。美容室に行くたびに担当の美容師さんに相談し勧められるままに高価な育毛トニックや頭皮マッサージを試してみましたが期待したような効果は得られず原因がわからずに悶々とする日々を過ごしていましたがある日職場の健康診断を受けた際に医師からヘモグロビンの数値は正常範囲内だが貯蔵鉄であるフェリチンの数値が極端に低い「隠れ貧血」の状態であると指摘されたことがすべての謎を解く鍵となりました。医師の丁寧な説明によると女性は毎月の月経による出血によって慢性的に鉄分を失いやすい宿命にあることに加え無理なダイエットや偏食によって鉄分の摂取量自体が不足している人が非常に多く体内の鉄分が枯渇すると血液が酸素を運ぶ能力が低下するため生命維持に直結しない頭皮の毛母細胞などは真っ先に酸欠状態に陥り細胞分裂が止まって髪の毛が抜け落ちてしまうという恐ろしいメカニズムを知らされました。鉄分はコラーゲンの生成にも不可欠なミネラルであるため鉄分不足は頭皮の弾力を失わせ健康な髪の毛を支える土台をも崩してしまうと聞き私は自分の抜け毛の原因がまさにこの鉄分不足にあったのだと確信しその日から鉄分を意識した食生活の改善に真剣に取り組むことを決意しました。鉄分には肉や魚に含まれる吸収率の高いヘム鉄と野菜や海藻に含まれる吸収率の低い非ヘム鉄があることを学び私は毎日の食事に赤身の牛肉やカツオのたたきあるいはアサリや牡蠣といったヘム鉄を豊富に含む食材を積極的に取り入れるとともにほうれん草や小松菜などの非ヘム鉄を含む野菜を食べる際には鉄分の吸収を劇的に高める働きのあるビタミンCを豊富に含むパプリカやブロッコリーまたはレモン果汁を組み合わせるという工夫を凝らしました。また食後のお茶として愛飲していた緑茶やコーヒーに含まれるタンニンが鉄の吸収を阻害することを知り食事中や食直後は鉄分の吸収を邪魔しない麦茶やルイボスティーに切り替えるなどの細やかな配慮も欠かしませんでした。このような鉄分を意識した地道な食生活を半年ほど続けた結果私のフェリチンの数値は正常値まで回復しそれに伴って悩みの種であった抜け毛は劇的に減少し髪の毛の根元から立ち上がるような力強いコシと若々しい艶を取り戻すことができました。この経験を通じて私は女性の美しさや髪の毛の健康は高価な化粧品やヘアケア製品によって作られるのではなく自分自身の身体の内部に目を向け不足している栄養素をしっかりと補うという基本的な自己管理によってのみ達成されるものであるという確固たる信念を持つに至りました。